医師国家試験受験記(第二章)

第二章:マッチング

前回、国家試験の分析をする、と言いましたが、まだ全然進んでいません。意外と重たいです。
国家試験は3日間かけて行われるので、体力的にも精神的にも随分辛いものだと思われます。
国家試験そのものについては後日改めて書きますので、しばしお待ち下さい。

今回は、マッチングという制度についてご紹介したいと思います。
今から10年ほど前、医療制度が随分と変わりました。これにより多くの病院(主に地方)は経営難と人材難に陥りました。
医師の研修制度に関しても随分と改められ、これが地方病院の人材難の悪化の原因です。
それまでは新卒の医師は、出身大学に残り、研修医として数年過ごし、そのまま大学病院の希望の診療科に入局する、と云うのが基本的な流れでした。各科の教授には強大な権限が認められており、若手医師に将来のポストを約束する代わりに、特定の病院で一定期間働かせる事が出来たのです。これが地方(特に過疎地)の病院の医師確保をになって来たのです。
しかし、その文化は一人の政治家の手で木っ端微塵にされました。
そう、小泉純一郎です。
彼は、郵政民営化の陰で多くのものを変えたのです。
その一つが、研修医の制度改革でした。
どう変わったかと言えば、研修医は行きたい病院に行けるようになったのです。
つまり、より便利な所に、より給料の良い所に、よりQOL(生活の質)の高い所に、研修医は勤められる様になったのです。
そうなれば、当然、給料が安く、仕事が大変な大学病院を選ぶ人間はそう多くは無い。
だから、この国の医療の最先端を築き、各地の医療の数と質を保ってきた大学病院は余裕がなくなってしまったのです。
その為に、今まで地方に派遣していた若手医師を大学病院に呼び戻さざるを得ず、かつてはほぼ無給で使えていたはずの研修医にも多額の給料が必要になり、経営を圧迫しました。
当然、地方病院は医師の確保が難しくなると共に、診療報酬の引き下げも相まって、経営難に陥り、多くは閉鎖されたのです。
勿論、僕にとっては給料が上がるし、大学病院に残っても、昔よりも大切にしてもらえるので、悪い事ばかりじゃないのだけれど。
ただ、社会の為に、が大前提であったはずの日本の医療がこうして崩壊したのを考えると、喜んでも居られないのです。

前置きが長くなりましたが、肝心のマッチング制度について説明致します。
研修医が行きたい病院に行ける、と云う事は、人気の病院とそうではない病院に分かれる事になる。前者は、研修医の選抜を行う事が必要になり、後者は呼び込みが必要になる。
そこでマッチングと云う制度が出来ました。
簡単に言えば、研修医と病院の相互ドラフト会議みたいなものです。
公益財団法人医療研修推進財団が、全ての研修医(医学生)と病院の動向を管理し、各々が希望の順位を出すのです。
それが定員の中で一致したものから、採用が決まっていき(マッチし)、マッチした場合は医学生も病院も辞退する事は出来ません。
具体的に見てみましょう。
僕が病院(病院によっては研修内容に応じて複数のコースを設定している)の希望順位を
1位:A病院○○コース
2位:A病院××コース
3位:B病院
4位:C病院
と登録したとしましす。
各病院には、
A病院…○○コースにa人(希望順位を隠した状態で、全志望者の名前のみが通知される)の応募あり、××コースにb人の応募があった。
と云う様な情報が寄せられるのです。
全国の病院に同様の情報が寄せられます。(他病院の応募状況は判らない様になっている)
もちろん、各病院は事前に採用試験をやっているので、その結果に基づいて、各応募者に採用希望の順位を付けるのです。
僕自身があまりこの仕組みに興味が無いので、こちらを載せておきます。

フォト



来年度の研修医のマッチングは現在進行中です。
一昨日、中間発表が行われ、各病院(各コース)の第一希望者数が公開されました。

僕自身は母校の周産期コースを第一希望にしています。
採用試験で、面接官の教授から『4月からよろしくお願い致します』と言われたので、まず間違いないと思うのですが、この中間発表は気になりました。
募集人員は4名で、第一志望者は僕を含めて2人なので、心配なさそうです。
たぶん、来月にはマッチングが確定し、病院側と仮契約を結ぶ事になると思います。

なぜ【仮】契約かって?
ええ、卒業できなかったり、国家試験で失敗したり、そう言う事があるからです。
怖いですね。

こんな面倒な仕組みを経て、来年、研修医になります。


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国家試験まで残り132日
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2014年09月28日